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 ■ ワールド ≫ ヨウゴシュウ ≫ クロム
フェアシュタントの科学者で、アインスラーテイルの開発においての責任者。
戦前より主に神経科学の分野で活躍しており、細胞神経学、システム神経学、発達神経学、理論神経学、認知神経学、神経工学など広い分野で研究を進めていた。
幼少期から学問が好きで、研究に人生を捧げていたような男であった為なのか、元々から口数少なく無愛想で、社交的とは言えない性格の持ち主ではあったが、大戦、戦後を生きぬく中、あまりにも多くの人間の醜状陋態(しゅうじょうろうたい)を見続けてきたせいもあり、良好な人間関係を築くことが出来ず、出来る限り人との接触を拒んでいた。
そんな中、自身の研究の為立ち寄った街にてラーテイル(このときの彼女に名前はない)に出会う。
クロムと彼女との出会いは、彼女の人生に強い影響を与えたが、それは彼にとっても同じであった。
このときの彼はすでに50代であり、残りの人生を細々と自身の研究の為に費やそうと考えていたのだが、彼女を養子にしたことで徐々にその行動、生きる目標を変化させていく。
彼女と二人で過ごす平穏な日々は彼にとっても彼女にとっても幸せな時間であり、また人として充実した毎日だったことであろう。
だが、広がる戦火によってシュネーの街は崩壊。
再び人々の争いの渦中に巻き込まれていくこととなる。
これにより平和な日常を失った彼は、戦争終結の為の方法を模索する事を決意。
そして自身の思想に同意する人間を探すべく、当時多くの知識人が集まるルフトシュトロームに移り住む。
元々政治や経済にはとことん疎くメンバー集めのノウハウ等も全く無かったが、昔のつて(縁故)をたどるように科学者と会合を意欲的に行い、その結果として自然結成的に組織としての形が作られていった。
この頃からルフトシュトローム治安維持部隊情報局の監視がつくようになるが、政治的思想を有していない科学者グループであるという事の認知の為にも、自らの組織をフェアシュタント(知力)と称し表向き平和維持活動の為の科学者同士の繋がり、学術組織としての活動を世間に対し公表。
結成間もない有望株の彼らのことを、利用価値があると考えたルフトシュトローム防衛局(ルフト軍)上層部は早々に様々なアプローチを仕掛けてくる。
その結果、フェアシュタントはルフト軍に対して新兵器開発の為の研究、技術提供を行う事で、見返りにルフトからの莫大な研究費用、安全保障を受ける事となるのだが、これはクロムを含むフェアシュタント結成初期メンバーの望んだことではなく、実情は一般に伝えられている事とは異なっていた。
表向き、ルフトシュトロームとフェアシュタントの協力関係は利害の一致(金、技術、安全)としての結びつきに見えるものであったが、クロムの考えは「巨大組織に対して自分達の活動を公式に認めさせたうえで、独立した勢力としての立場を確立させる為」としてのものであった。
つまりはじめからルフト軍を信用しているわけではなく、あくまで独自の立ち位置を確保した上で、機会があれば自ら第三の勢力として独立する為の準備期間としての同盟。
その為、得られる資金運用の工面や技術力拡大の為の組織改革や人員補填など、自身の研究以外にも粉骨しなければならなくなっていった。
すでに高齢かつ負担の大きい活動は、元々から丈夫でなかったクロムの身体を徐々に蝕んでいく。
さらに不運なことに無理な組織拡大のせいか、組織のまとまり自体も弱くなっていき、本来の目的であった「独立した第三の勢力」も現実味のないものになっていった。
これに関してはルフトシュトローム側のフェアシュタントに対する篭絡戦略があったのではないかとも言われている。
こういった状況を打開する為、クロムは理論としては完成していた決戦兵器の開発に着手する。
完成と共にルフトシュトロームからの完全独立を果たし組織の再構成を行う予定ではあったが、ここへきてルフトの息の掛かった一部組織メンバーの裏切りにあい計画が漏洩。
情報を得たルフト軍は、クロムと数名を第一種の要監視人物として指定する。
状況によってはフェアシュタントの組織解散やクロム自身の拘束の危険もあったが、これをいち早く察知し、実験体であったラーテイルをコールドスリープとし計画を凍結。
ルフト軍側には「実験体に重要な問題が発生した為実験は中断した」との報告をした上で技術情報とレポートの完全開示をすることで最悪の状況からは逃れる。
だが代わりに今後はルフト軍上層部からの指示管理の元、新しい被検体の確保と研究の再開要請を受けることになる。
さらにこの新兵器開発に関しては倫理的な問題が解決されていない為、軍指導の下そういった活動がなされているというのは体裁が悪く、またその事で政治に対しての求心力低下を恐れたルフト軍は、被検体の確保から実施まで全てはフェアシュタント独自の意志と活動で行われているという体をとらせる。(※1)
小規模メンバーのフェアシュタントと違い、実質的には軍が関与していたことで被検体に関しては結構な数が集まる事になったが、これに対し本意ではないクロムらは被検体として耐えられる身体能力、神経細胞等の審査基準を厳しく定め開発の引き伸ばし工作を画策。(※2)
しかしながらその思惑も上手くはいかず。
ルフト軍側は「新兵器の納品期日がこれ以上延びるようなことがあればそれを意図的な開発妨害行動と捉え、実力行使を行う」との文書をフェアシュタントに送りつけ、実験体で現在コールドスリープ中であるクロムの娘の身柄を提供するよう要求してくる。
致し方なく開発継続を決めるクロムらではあったが、ルフト側はさらにクロムの息の掛かった初期メンバーのうち数名を革命運動家と位置づけ政治犯として拘束。
足りない人材はルフトの技術関係者の中から派遣し(監視役としての意図もあり)開発継続を強制させる。
これらルフト軍の手回しにより完全に打つ手を失ったクロムは被検体1号をベースとした試作機製作を行う。(※3)
アインスの開発は成功するがこれを機にクロムは姿を消し、フェアシュタント自体も程なく解散。
組織の解散によってメンバーは散り散りになるが、ルフト軍の監視は厳しく、半数以上はそのままルフト軍に吸収されアインスのメンテナンス要員として活動することになる。
無論その中には、ルフト軍に殉じつつその後の身の振り方に関し模索する者も多くあり、セレンもそういったメンバーの中の一人である。
ちなみにこれら政治的な動きに関して全貌を把握しているのはクロムのみであり、セレンを含め他のメンバーは一部の事情しか知らない。

アインス開発後のクロムが何を考えて何処に身を隠していたかは不明だが、コールドスリープ状態であったラーテイルのルフトシュトロームからの奪還を考えるに、新たな組織結成を考えていたとも、単に娘との再会を行い昔のような生活を望んでいたとも、様々に言われている。
消えたクロムの事を警戒したルフトシュトロームは、ノルト・リヒト戦、シュヴァルツ・リヒト戦において、彼の足取りを追うようにセレン、アインスを利用した作戦を多用するが、彼女らとクロムの関係に関してそれほどの理解が無いルフト軍の動きは空振りを続けることになる。(※4)

クロムは最期に自身の後継となる元フェアシュタントメンバー数名に後を託す言葉を残している。
だがセレンに対しては別の生き方を模索する旨(第三勢力としての組織作りではなく、この荒んだ世の中で生きていく新たな世代の人間としての生きる道の模索)の内容を遠まわし(暗号的)に伝えているが、その真意がセレンに伝わったかどうかは彼女自身でなければ判らない。
彼の残した言葉で
「嘘で固められた平和と、真実の戦争、その事自体に何かを言いたいわけではないが、多角的に見たうえでそれぞれにある個別の真実を、各々が独自に受け入れる事、そしてそれこそ人の未来、生きていく為の多様性である」
というものがある。
自身とフェアシュタント、ルフト軍との関係を経て、上っ面の事情では本質は分からない。
しかしながらそれをどう見て、どう判断して、どう行動するかは千差万別であり、真実を知る事こそが必ずしも良いとは限らないという考えがあったのだあろう。

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(※1)
被検体募集に関してもルフト軍がフェアシュタントの名を騙り中心となって行っていたと言われている。

(※2)
クロムの考えとしてはセレンと異なり倫理的で感情的な反発ではなく、フェアシュタントが組織としての評判を落としてしまっては、その後世間の支持を得る事は極めて難しく、ルフト軍の後ろ盾無くしては存続出来ない組織になってしまうことの懸念。
そうなっては第三勢力としての独立の道が完全に潰えてしまうという事に対しての考えがあったと言われている。

(※3)
この試作機というのがYF-01 アインスという事になる。
アインスの開発に加わったメンバーのうち半数はルフト軍からの派遣研究員であり、記録されている処置手術直前の会話に関しても半数はルフト軍関係者である。

(※4)
セレン、アインスに作戦概要を説明する前線基地指令補佐は、ブリーフィングにおいて嫌味をいう事もあったが、この時のセレンはクロムの真意を知らずにいた。


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最後に、コールドスリープする直前、実験体になることを望んだ彼の娘(ラーテイル)とクロムとの会話の記録を、元フェアシュタントのメンバーより入手したので記しておく。
私には彼と彼女の関係性が少し垣間見えた気がする。
そしてここでこの一連の大戦の調査を一旦の区切りとする。(記:匿名)

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     これが終わると お前にはもう 戦いしか残されていない
     お前は 何故 戦う事を選んだ?

     貴方の 為に。
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